Say Cheese!!



我が家のリビングを、隅から隅までじっくりと眺める。
先生は部屋にいるだろうし、レオもドニーもマイキーもいない。よし、チャンスだ…!
足音を忍ばせながら、俺はリビングを抜け、キッチンへと向かう、出来るだけ音を立てないように冷蔵庫を開けて、中からお目当てのものを取り出す。
「へへ…!」
俺が取り出したのは、チーズケーキ。腹も減ったし、一足先におやつにしよう、って思ったからだ。
崩れないように慎重にお皿に乗せ、ソファーに腰掛けて、さあ食べよう、とフォークを振りかぶったところで。
「どーん!!」
…背後から飛びついてきたマイキーに頭を押されて、俺の顔はべしゃりとチーズケーキを潰してしまう。
「ラッフー! 何してんのー?」
「……。」
ケーキまみれの顔で睨むと、マイキーはそんな俺をまじまじと見て、不意ににやっと笑った。
「あららー、ラファエロ、ずいぶんと美味しそうだね?」
「…何しやがんだこのバカランジェロー!」
今にも飛び掛るつもりだったのに、マイキーはひょいっとそれを避けて、
「ゴメンってばー!」
俺の顔についたケーキを、ぺろりと舐め取ってしまう。
「舐めんじゃねぇ!」
「えー、だってもったいないじゃーん!」
暴れてもがくけど、マイキーは止まらない。気づけば、俺は床に押し倒されてしまっていた。そして、
「ついでに、ちゅー!」
「んっ…!」
口を塞がれて、俺は大きく目を見開く。チーズケーキの味がするね、とか言ってきたマイキーの頭を、俺は思いっきり引っぱたいた。
「いったぁー! うえーん、ラフがぶったー!」
「うるせぇ! お前が急に飛びついてくるからだろうが!」
「えーん、凶暴ラフー!」
…最悪だ。結局ケーキは食べられなかったし、マイキーの泣き声を聞きつけてレオのヤツが飛んでくるし…。
これ以上ここにいると、面倒ごとしか降ってこない。だから俺は、くっついたままのケーキを落としに、バスルームへと逃げ込んだ。


「…先生、何だってこんな時の写真撮ったんだ…?」
ぽつりと呟いた俺の視線は、膝の上で広げられたアルバムの上に落ちていた。俺たちがまだ小さい頃のアルバムだ。
そこには、マイキーと俺が取っ組み合いをしている写真が貼られていた。チーズケーキまみれの俺の顔と、大口開けて笑ってるマイキー。こんなの、いつの間に撮ったんだ…。
恐らく、先生からすると、写真に収めておきたいほど、微笑ましかったに違いない。嘆息しながらページをめくろうとすると、当のマイキーが、俺の肩越しにアルバムを覗き込んできた。
「わー、この写真懐かしい! オイラ覚えてるよー! ラフがチーズケーキをつまみ食いしたときのことだよねー!」
「…うるせぇな、忘れろそんなもん。」
吐き捨てるように言うが、マイキーには聞こえていないようだ。浮かれたような足取りで、俺から離れていく。ったく…。
ページをめくると、不意に俺の目の前に皿が突き出される。甘いチーズの香りが鼻をついた。チーズケーキか…?
「…何だよ。」
皿を持つ手を目で追うと、やっぱりマイキーの顔がある。俺の横に座り込んだマイキーは、受け取れとでも言いたげに皿を上下に振る。
「何って、さっきの写真の再現したいな、って思って! ケーキまみれのラフ、可愛かったからさ♪ ケーキもオイラが舐めてキレイにしたげるから! さぁどうぞ!」
「…誰がやるか!!」
えー何でだよー、やろうぜー、とうるさいマイキーを無視して、俺は深々とため息をついた。ワガママなのは、ガキの頃から変わってねぇな…。
頬杖をつくと、今度は俺の前にフォークが突き出される。一口分ほどのチーズケーキが、上に乗っていた。
「これならいいだろー。はい、あーん!」
マイキーの声に、俺はもう一度ため息をつく。俺が乗るまで、諦めないんだろうな、きっと…。
アルバムを閉じた俺は、半ばやけくそ気味に、差し出されたケーキを頬張る。拗ねたような顔だったマイキーが、途端に笑顔になった。


「そういや、このケーキ、誰が買ってきたんだ?」
「あのね、ウサギさんがレオちゃんに、って持ってきたヤツ!」

…どうも、聞かなかったことにしておいた方が良さそうだ。



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