Feed the Spike, give your love
新鮮な野菜を山盛りにした皿を、テーブルに置く。
洗ったばかりで目にも鮮やかな、サニーレタスや小松菜、食べやすく小さめに切ったかぼちゃときゅうり。
少し多いかとも思うが、こいつはこの程度の量なら、何なく食べきってしまう。…生野菜なんて、そんなに美味いもんでもねぇと思うが…。
ともあれ。
「スパイク、メシだぜ。」
足元に来ていた彼を抱き上げ、テーブルに乗せてやる。彼はゆっくりと皿に近づき、お気に入りの小松菜に齧りついた。
スパイク。簡単に言うと、俺が飼っているカメの名前だ。とはいっても、こいつは俺たちと同じようにミュータントになっているわけではない。ごく普通のリクガメだ。
最初は、俺もペットを飼うことにあまり乗り気ではなかった。しかし、日が経つにつれ、スパイクは毎日エサをやる俺に、すっかり懐いてくれていた。こうなると愛着も沸く。買い物に出た際も、スパイクのために新鮮な野菜を買ってくる。恐らく家族の中で、スパイクを一番可愛がっているのは、俺だろう。
また、スパイクは俺がゲームをしている時、俺の肩の上にいることが多い。決して安定しているとは言えない俺の肩の上で、スパイクは器用にバランスを取り、決してずり落ちたりしない。…それだけ俺を信頼しきってる、ってことなんだろうが…。
そんな風に丁寧に面倒を見ているため、スパイクの食事風景を眺めるのも、俺の日課となっていた。
テーブルの横の椅子に腰掛け、彼がかぼちゃを噛み砕いて飲み込むのを、じっと見つめる。
「美味いか? スパイク。」
少し行儀が悪いが、俺はテーブルの上に腕を投げ出し、それを枕代わりにしていた。こうすると、目線がスパイクと同じぐらいになる。…まぁ、美味いかって聞いたって、答えるわけねぇか…。
と、次の瞬間。スパイクが急に俺の方を向いた。皿から離れるように足を踏み出し、そして。
「…っ!?」
さっきまでかぼちゃを噛んでいたスパイクの口が、俺の唇にそっと触れてくる。懸命に首を伸ばして、スパイクは俺にキスをくれた。
「…お、お前っ…!」
掠れた声で呟くと、スパイクはまた皿の方へ戻っていき、食事を続ける。体を起こした俺は、まだ先ほどのキスの感触が色濃く残る口を、手で隠すように押さえた。
もしかしたらコイツも、普通のカメではないのかもしれない。
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