スカーフを巻いて



「なぁ、ブルース。」
「…何です?」
ビッグワンの艦橋で、バルジ隊長が俺に声を掛けてきた。
顔を向けると、隊長は自分がしていたスカーフを取り、俺に差し出してきた。
「えっ…?」
「…してみてくれ。」
俺は呆気に取られながらもスカーフを受け取る。まだ隊長の温もりが残るそれを、俺はとりあえず首に巻いてみた。
「もう少し、こうした方がいいぞ。」
隊長が手を伸ばして直してくれた。首元にスカーフがあるというのは、何だか新鮮な感じがする。
「…どう、ですか…。」
「似合うな…。予想以上だ。」
隊長の言葉に、俺は苦笑する。はっきり言って、俺のキャラではないのだが…。でも、隊長が誉めてくださったのが、素直に嬉しかった。
「ブルース、ちょっと『ビッグワン、発進!』って言ってみろ。」
「え!? …遠慮します。それは隊長の専売特許じゃないですか。」
「命令だ。」
笑顔で言われてしまう。命令では逆らえない。仕方なく、俺は前のコントロールパネルに向き直り、なるべく隊長のように低い声で言った。
「……び、ビッグワン、発進!」
視線を隊長に戻すと、隊長はあろうことか額に手を当てて爆笑していた。
「はははは……。」
「わ、笑わないでください! 自分で言っておきながら…。」
「はは、いや悪い悪い。では今度の任務はブルースが隊長だな。俺は戦闘パートを担当するから。」
「結構です。」
俺は隊長から目を逸らす。顔が真っ赤になっている。幸い艦橋の中は薄暗いため、バレてはいないようだが。
「そんな顔をするな。ブルースだって、何時かはどこかの小隊の隊長になるかもしれんぞ。」
「いいえ、俺はバルジ隊長の元を離れる気はありません。」
言ってやった。隊長が顔を真っ赤にしている。さっきのお返しだ。
俺は立ち上がると、首のスカーフを解き、隊長の首に巻きなおした。
「…俺は、あなたを慕っているんですから。いつまでもシリウス小隊の、俺たちの隊長でいてくださいよ。」
「…わかった。」
スカーフを巻く腕を引き寄せられ、俺は隊長に唇を奪われる。目を閉じてそれに答えると、隊長は笑いを漏らして唇を離した。
「…逃がさないからな。」
「…望むところです。」
艦橋に、俺たち二人の笑い声が響いた。



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