あいつの笑顔が見たいから



夜具の中で、俺は薄っすらと目を開けた。
「うっ…、まだ眠いぜ…。」
それでも、大きく両手を頭上に伸ばし、体内に残った眠気を追い出す。上半身を起こすと、少し右の肩が痛んだ。
「…昨夜、根詰めてやってたからだな…。でも、出来上がって良かったぜ。」
そう言って、俺は枕元に置いておいた簪を手に取る。金色の簪の先に、
小さめの赤い珊瑚の珠と、同じくらいの大きさの鈴をあしらった、特別な品物だ。
特に鈴は、これを渡す相手がいつも使っている物にもくっ付いている。軽く揺らすと、鈴はちりん、と澄んだ音を立てた。
「…あいつ、きっと喜ぶな。」
昨夜出来上がったばかりのそれを、俺は青い布で丁寧に包み、元の場所へ戻した。

「さて、と……!?」
俺はそこで、初めて外を見た。すでに太陽は高く昇っている。寝過ごしたか…!?
「やべぇ…!」
俺は慌てて庭の井戸へ行き、大急ぎで顔を洗い、身支度を整える。夜具を畳んで片付け、
簪を懐に仕舞い込むと、俺は家を飛び出した。

目指すは、日本橋。あいつが営む、組紐を扱う店。


あいつ―― 組紐屋の竜の、ほんのりと紅を差した唇の端に浮かぶ笑みを思い浮かべながら、
俺は愛しく思う相手がいる場所へ足を急がせた。




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まあね、まさか自分が秀×竜書くなんて思いませんでした。
でも、思いついてしまったから仕方ないですよね。