愛する人は
「すみません…、出過ぎた真似でした。」
ブルースが学を責めた事を謝ると、バルジはそれを笑って受け止めた。
「まぁ、ほどほどに頼むな。」
バルジが許してくれたことに安堵すると、ブルースは俯いて言葉を続けた。
「隊長、俺にとって隊長は、かけがえのない人なんです。何だか、学に隊長を取られてしまいそうで、つい…。」
「…何だブルース、妬いているのか?」
からかうようなバルジに、思わずブルースも拗ねたような口調になる。
「そうかもしれないですね。」
「ん? 何だと? もう一回言ってみろ。」
「あっ…。」
自分が口を滑らせたことにようやく気づいたブルースは、慌てて取り繕うとした。
「す、すみません…、つい本音が……っ!」
更に墓穴を掘ってしまう。真っ赤になって俯いたブルースを、バルジは笑顔のまま見つめた。
「この野郎…。」
バルジは少し困ったような顔をし、ブルースを安心させるように言った。
「心配するな、浮気などしない。」
「はい…。」
バルジがそんな事をする人間ではないことくらい、ブルースにはわかっている。わかっているのだが…。
「…心配か?」
心の内を見透かされたようで、ブルースは思わず顔を背ける。
「ブルース、確かに学は、私が尊敬する有紀隊長の息子だ。だが、だからといって特別扱いはしない。」
そこまで言うと、バルジはすっと立ち上がり、俯いたままのブルースの体を優しく抱きしめた。
「特別な存在は、もう目の前にいるからな…。」
「た、隊長…!」
慌てるブルースに、バルジはきっぱりと言い放つ。
「私が愛しているのは、お前だけだ。」
バルジの言葉が胸に沁みる。溢れ出した思いを言葉に変えて、吐き出す。
「…俺もです。愛しているのは、あなただけです。バルジ隊長…。」
ビッグワンの艦橋の中は、温かい空気に満たされていた。
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