約束
終わった…。
ソルエメラルドを全て取り返し、エッグマンネガを倒した。後は…、自分の世界に帰るだけだ。
「本当に、行ってしまうんデスか? ブレイズさん…。」
「……ああ。」
短く答えると、クリームは大きな目から涙を零しながら、私に抱きついてきた。クリーム。こちらの世界で出来た、大切な友達。
この人懐こい性格のウサギの女の子に、私は何度助けられたかわからない。しゃくり上げるクリームを、私は優しく抱きしめた。
「すまない。だけど、私は帰らなければならない。自分のいた世界に…。」
「そんなぁ…。」
「クリーム、行かせてやれ。ブレイズが困ってるじゃないか。」
後ろから声を掛けられ、クリームは振り向いた。声の主は、ソニック。私に協力してくれた、青いハリネズミ。
彼には本当に感謝している。だが…。
ソニックの顔を見るなり、私は胸の奥が痛むのを感じた。このまま別れてはいけない。ソニックに、私の想いを伝えなければ…。
何故かそう感じ、私はクリームに優しく声を掛けた。
「クリーム、悪いが、少し席を外してくれないか? ソニックに話があるんだ。」
「…はい。」
クリームが、泣きながらもその場を後にする。罪悪感は感じるが、ソニックに伝えるのなら、今しかない。
私はそう決めて、口を開こうとした。
「…オレに話って?」
私が話し出すより先に、ソニックが口を開いた。私は言うべき言葉が出てこなくて、仕方なく最初の言葉を感謝の言葉に切り替えた。
「その…、色々とありがとう。本当に感謝している。」
「ああ、いいさ。オレも、エッグマンの奴は見過ごせないからな。」
そう言って、ソニックは軽く笑う。その笑顔に、私の胸は逆に締め付けられる。
「あの、ソニック…。」
切り出そう。そのために、二人きりになったのだから。
「…何だ?」
「こんな事を言ったら、迷惑かもしれないが…。」
口篭る。覚悟を決めてはいても、やはり言うとなると緊張してしまう。
ソニックは何も言わず、こちらの言葉を待っている。私は震える手を宥め、言葉を吐き出した。
「こちらの世界に来て、お前とクリームに出会えて、本当によかった。」
「…あー…。」
ソニックは照れたように横を向いてしまった。今なら言える。私は言葉を続けた。
「クリームは、私の大事な友達だ。しかし、ソニックに対しては、友人以上の感情を持っていることに、私は気づいてしまった…!」
「お、おい、ブレイズ。それって、まさか…。」
「…そうだ。私は、ソニックのことが好きになってしまったんだ…!」
ここで耐え切れず、私の目から涙が零れる。ソニックが顔を紅潮させているのも、私の目には入らなかった。
「本来ならば、私とお前は出会うはずはなかった。こういう感情を持つことがそもそも間違いだと思う。しかし、どうしても伝えたかった…。」
あまり泣いているのを見られたくない。私はソニックに背を向けた。
「…もう、逢えないと思う。せめて覚えておいてくれ。遙か向こうの世界に、お前を想う者が居るという事を…。」
「…そんな事言うなよ。」
それまで黙っていたソニックが、口を開いた。振り向くと、ソニックは何時になく真剣な表情をして、こちらに近づいてきた。
「もう逢えないなんて、そんな悲しいこと言うなよ。きっとまた逢える。オレはそう信じてるぜ。」
ソニックの手が、私の腰を抱き寄せる。ソニックの青い瞳が、こんなに近くにある。それに見とれているうちに、私はソニックに唇を奪われた。
「!?」
顔が急激に熱くなる。思わず口を押さえて飛び退くと、ソニックが笑って言った。
「続きは、今度会った時にさせてもらう。いいよな?」
何も言えない。こくりと頷くと、ソニックは更に言葉を続けてきた。
「オレは約束は破らねぇ。そして絶対に裏切るような事も無い。覚えておいてくれ。」
「…ああ。」
ソニックの笑顔に、私も笑顔を返す。受け入れてもらえた喜びが、私の胸を満たしていた。
そうして、私はソニックとクリームに見送られ、元の世界に帰った。でも、もう寂しくはない。
私の胸には、決して破られることのない約束があるのだから。
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